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九話 憩いの時間と用務員カール

Author: Tubling
last update Last Updated: 2025-05-27 17:43:55
 「はい、じゃあ今日はここまで!」

 ドロテア魔法学園に復帰してから5日が経ち、少しここでの生活に違和感もなくなり、授業をする事にも随分慣れてきた。

 転生する前は学生だったし、誰かに教える立場でもなかったので授業をするという事に物凄く不安があったのだけど、いざ教卓の前に立ってみるとクラウディア先生の記憶も残っているからか、思いの外すんなりと先生をする事が出来たのだった。

 最初は先生と呼ばれる事にも違和感しかなかったのにね。

 風の教室で授業をしていて気付いたのは、クラウディア先生は割と生徒に好かれていたのだという事。

 皆が「クラウディア先生!」と寄ってきてくれて本当に嬉しいし、心から可愛いという気持ちが湧いてくる。

 やっぱりクラウディアはカッコいいのよ!

 私は一番好きなキャラクターだったので、彼女が慕われていた事実が嬉しくて仕方ない。

 それに――――復帰してから理事長に嫌味を言われる事もなく、とても快適に過ごせている。

 ゲームでは事あるごとに嫌味の押収だった2人なのに、こんなに穏やかに会話出来るようになるなんて思ってもいなかった。

 昨日は教室のゴミ箱を魔法を使わずに持って歩いていると、突然やってきて一緒に持ってくれたのだ。

 「君は風魔法を使えるのだから、魔法で重さを軽くしたらいいのに」

 「いえ、それだと生徒に示しがつかないと思うんです。なんだかズルをしている気がして……魔法っていざという時に使うものだと思うので」

 「ま、真面目だな……」

 理事長にそう言われたけれど、そんな私に付き合って一緒に大きなゴミ箱を持ってくれる理事長の方がよほど真面目だし優しいと思う。

 「真面目、ですか?このくらい普通だと思いますよ。でも理事長が手伝ってくれて助かりました、ありがとうございます!」

 前なら絶対に手伝ってはくれなかっただろうと思うから、今一緒に歩いている事が嬉しくて何だかお礼を言いたくなってしまったのだった。

 笑ってお礼を言ってみると、照れながら「礼には及ばない、ク、クラウディア先生が大変そうだったからな」とぶっきらぼうに言葉を返してくれる。

 理事長ってツンデレ?それに今クラウディア先生って言ってくれた?!

 前はロヴェーヌ先生だったのに……何だか距離が縮まっている気がして
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  • 孤独な悪女は堅物王太子に溺愛される~犬猿の仲でしたがうっかり誘惑しちゃってたみたいで乙女ゲーム的な展開が待っていました~   四十話 呼び出し

     ダンティエス校長が去ったドアを見つめながら、そろそろ本気で自分の気持ちをジークに伝えないといけないなと考えをめぐらせていた。 今日課外授業に行ってみて、外の世界がここまで危険に満ちているとは思わず、自分の考えが甘かった事を痛感する。 中にいれば今は比較的安全かもしれないけど、それはずっと続くものではない。 このまま放置していてもゆくゆくは王都も危険な状況になってしまうのなら、この邪の気配の根源を消し去らなければ――――きっと私の力はその為にあるのだと思う。 色んな事にけじめをつけないと。 「ダンテが気になる?」 「わっ!」 すっかり考え事をしていた私のすぐ後ろからジークの声が聞こえてきて、驚きのあまり変な声が出てしまう。 恥ずかしくてゆっくりと振り返ると、真剣な表情のジークがすぐ近くに立っていた。 「ずっとダンテが去ったドアを見つめているから」 「いいえ、違うの。考え事をしていただけよ。これからの事とか色々…………」 「これからの事?」 この世界の事、ジークにどうやって説明をすればいいんだろう。ここはゲームの世界で魔王を倒さないと世界が危ない……なんて伝えたらさすがに頭がおかしい人間に思われるわね。 私は、言いたくても言えないもどかしさに苦笑するしかなかった。 「………………そうやって言ってくれないなら……こうするしかないな」 「え?」 彼が何を言っているのか分からなくて聞き返すと、ジークの瞳が怪しく光り出し――――思い切り脇をくすぐられてしまうのだった。 「な、何を!あははっやめて~~あはっ、うふふ、ふ、くすぐったいっ!」 「言う気になったか?君が抱えているものを私と半分こしようと話したばかりではないか」 くすぐりながらも真剣な表情で伝えてくるので、私は観念して自分が感じている事を話そうと決意した。 どの道言わなければならない時はやってくるだろうし、ゲームの世界であるという事は言えないけど、これから起こるだろう事案は伝える事ができるかもしれない。  「わ、分かったわ!話すからっ」 「よろしい」  すぐにくすぐるのを止めてくれたジークは、私の言葉に満足気だった……なんだかいいように流された感じがしなくもない。 満足気な彼の顔を見ながら若干私があきれ顔をしていると、突然彼の腕にすっぽりと収められてしまう。 そし

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